国際大会

WTTチャンピオンズ横浜2025の結果詳細

WTTチャンピオンズのNER(同一国から出場できる選手数)は4で、ワイルドカード・推薦枠を除くと日本人上位4名しか出場できません。早田ひな選手は長らく、日本人上位4位以内をキープしてきましたが、怪我の影響もあって世界ランクを落としており、ついに日本人5番手に下がってしまいました。

WTTシリーズのエントリーには6週間程度の日数差があり、今大会は出場できましたが、早急に日本人4番手に復帰しないと、後続のWTTチャンピオンズに出場できません。早田ひな選手にとっては、今大会とその直後に開催されるスウェーデンスマッシュが踏ん張りどころです。

早田ひな選手はR16の激戦を制して準々決勝に進出しましたが、恐ろしく強い陳幸同選手に逆転負けを喫し、ベスト8でした。しかし、遂にリミッターを解放したエンジン全開の早田ひなを見ることができた、素晴らしい大会になりました。

*アイキャッチ画像はこちらの動画からの引用です。

WTTチャンピオンズ

  • シニア向けWTTシリーズの上から3番目の大会です。
  • 男女それぞれ年間最大6大会開催可能です。(2024年までは4大会)
  • 本戦6日、予選はありません。
  • シングルスのみ実施。出場人数は30名+ワイルドカード1名+WTT推薦1名の合計32名。
  • 各協会から4名までしか出場できません。
  • 世界ランクによる出場制限はありません。
  • ワイルドカード枠1名、WTT推薦枠1名。
  • シード数は8。
  • 出場資格を持つ選手が病気や怪我以外の理由で辞退した場合、ペナルティの対象となります。ただし、2025年4月以降、選手は年間2回まで個人的理由で出場を辞退できます。
  • R32、R16は5ゲームマッチ、準々決勝以降は7ゲームマッチ。(2025年3月までは準決勝と決勝のみ7ゲームマッチ)
  • 試合は1テーブルで進行されます。
  • 優勝選手には1,000ポイントが付与されます。

大会情報

ネット中継

試合はT1のみ(放送用の超豪華なテーブル1台だけ)で行われました。配信は、世界卓球2025ドーハ大会に似たものでした。

  • WTTがYoutubeチャンネルでリアルタイム配信しました。が、日本は地域制限により視聴できませんでした。
  • テレビ東京卓球チャンネルが日本人選手以外の試合をリアルタイム配信しました。
  • テレビ東京がU-NEXT(有料)で日本人選手の試合を、日本語実況解説付きでリアルタイム配信しました。
  • 日本人選手の一部の試合を、テレビ東京が地上波とBSで生中継しました。
  • テレビ東京卓球チャンネルで公開されるアーカイブ、日本人選手の試合は大会開催期間中はハイライトのみです。おそらく大会終了後、1週間程度でフル動画のアーカイブが公開されるものと期待しています。

大会開催前

ドローセレモニー

前日練習

練習パートナーは左俊斉コーチです。

調子良さそうです。

見どころ解説

高樹ミナさんによる見どころ解説です。

シングルス出場選手

中国はゴールドカードを2枚行使し、さらにWTT推薦枠も得て合計7名がエントリーしています。早田ひな選手はWR5位で第3シードでした。

シングルス出場選手

日本人選手は張本美和選手、伊藤美誠選手、大藤沙月選手、早田ひな選手、ワイルドカードで橋本帆乃香選手の5名が出場しました。

シングルス:ベスト8

早田ひな選手は順当ならR16で張本美和選手と、準々決勝で陳幸同選手と当たるドローでした。早田ひな選手はシード外だったため、初戦のR32で四天王に当たる可能性もありました。今大会のドロー運は十分良かったと思います。

これはドロー結果の左右半分ずつの山を示したものです。

ドロー結果

出典:テレ東卓球情報のXポスト

早田ひな選手はR16の激戦を制して準々決勝に進出しましたが、恐ろしく強い陳幸同選手に逆転負けを喫し、ベスト8でした。しかし、遂にリミッターを解放したエンジン全開の早田ひなを見ることができた、素晴らしい大会になりました。

R32(1回戦)

スペインのマリア・シャオ選手との対戦でした。2018年以降の対戦はありません。

スペインのマリア・シャオ選手

威力のある両ハンドが戻って来ました。宿題もできましたが、接戦を制してしっかり勝ちました。

マリア・シャオ選手との対戦のスコア表

  • 第1ゲーム、シャオ選手が強くて競った展開が続きます。早田選手は両ハンドをしっかり振れており、ボールに威力があります。11-6でこのゲームを取ります。
  • 第2ゲーム、シーズン2での練習の成果を試すようなプレーが見られます。点差が開かない展開が続きますが、10-8と先にゲームポイントを握ります。が、シャオ選手にレシーブで攻められてデュースになります。きわどいプレー2本をものにして12-10でこのゲームも取ります。ベンチに戻る際に舌を出している様子が映ります。
  • 第3ゲーム、レシーブが攻撃的で上手いシャオ選手に手を焼きますが、早田選手も攻撃的なプレーで応戦します。10-7とマッチポイントを握ったものの、デュースに持ち込まれます。勝負どころでの失点が続き11-13でこのゲームを落とします。
  • 第4ゲーム、まだ効果的なサーブを見い出せず、攻撃的なレシーブをされてしまいます。シャオ選手はラリー戦にも強いです。攻め続けて10-7でマッチポイントを握り、最後激しいラリー戦を制して11-8で勝ち切り、右手拳を何度も振ります。

マリア・シャオ選手、強かったです。第3ゲームを落としてからは心拍数が上がりっぱなしでした。

フル動画。

ハイライト。

試合結果を伝える記事。

テレ東制作の公式動画。

R16(2回戦)

張本美和選手との対戦でした。強敵です。実力を100%出さないと勝てません。

張本美和選手

実力を出し切って勝ちました。凄い試合でした。

張本美和選手との対戦のスコア表

  • 第1ゲーム、実力拮抗で点差が開かない展開が続きます。両選手とも仕上がっており、レベルの高いプレーの応酬が続きます。より攻撃的姿勢を見せた早田選手が11-7でこのゲームを取ります。
  • 第2ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続き、9-9まで競ります。そこから2本連続で決められ、9-11でこのゲームを落とします。
  • 第3ゲーム、競った展開で6-5になった後、流れをつかんで引き離し、11-5でこのゲームを取り返します。早田選手の状態の良さが分かるプレーが多く見られました。
  • 第4ゲーム、張本選手の逆襲と、早田選手にややミスが増えて流れを渡してしまい、5-10と大量リードでゲームポイントを握られます。そこから驚異的な粘りを見せてデュースに持ち込ますが、張本選手が上手さを見せて11-13で落としてしまいます。勝負は最終第5ゲームへ。
  • 最終第5ゲーム、2-4となったところで早田選手がメディカルタイムアウト(MTO)を申請します。試合後のインタビューで明かされますがパリオリンピックで負った怪我のことではなく、WTTの許可を得て岡コーチに治療してもらいます。MTO明けに4-4と追い付き、その後も一進一退の攻防が続きます。7-7から両ハンドを振って攻め続けた早田選手が10-7とマッチポイントを握ります。勝負どころの9-7での激しいラリー戦を制した時はこの試合で一番大きな声を出しました。R32では10-7のマッチポイントをモノにできなかった早田選手ですが、最後この試合で多く出されていたロングサーブをレシーブエースして11-7で勝ち切り、厳しい戦いに勝利すると同時に、準々決勝で陳幸同選手と再戦するチャンスを獲得しました。

勝利した瞬間、絶叫しながら右手拳を力強く振りました。今日の状態より少しでも悪かったら、負けていたと思います。

フル動画。

公開待ち。

ハイライト。

コート上での勝利インタビュー。

試合後のミックスゾーンでのインタビュー。MTOの理由を明かしています。必見です。

試合結果を伝える記事。

前記ミックスゾーンでのインタビューを記事にしたもの。

試合中、左手に走る違和感。原因は、遡ること数ヶ月前。長時間の飛行機移動中に不自然な姿勢で眠ってしまい、尺骨神経を圧迫したことによる握力低下だった。それ以来、ボールを強く押し出す感覚が薄れ、フォームも安定しない。世界選手権以降も症状は続き、思うように練習が積めない日々が続いた。

それでも、彼女はコートに立つ道を選んだ。「いつ治るか分からない。今の状態でできることを探して戦おう」。逃げずに試合に向き合うことが、勝敗以上に自分を成長させると信じていた。

試合の鍵は、第5ゲーム2-4でのメディカルタイムアウト。USスマッシュの陳熠戦で、同様の症状でタイムを取らなかったことで悔いを残した経験があり、今回は覚悟を決めて選択した。

引用:早田ひな、左手神経の不調を抱えながらも勝利。張本美和、手応えと悔しさを胸に進む

試合前の練習の様子。

激戦を制して勝利した瞬間。

準々決勝

中国の陳幸同選手との対戦でした。世界卓球2025ドーハ大会で完敗しています。

陳幸同選手

怪我する前より強くなった早田ひな選手が2-0と先行しましたが、恐ろしく強い陳幸同選手に逆転負けを喫しました。

陳幸同選手との対戦のスコア表

  • 第1ゲーム、シーズン2で取り組んでいるプレーを精度高く出しながら、攻撃的姿勢で互角の展開が続きます。後半リードを広げて11-6でこのゲームを取ります。早田選手、仕上がっています。ベンチに戻ると岡コーチに左腕をマッサージしてもらいます。
  • 第2ゲーム、前回対戦時はラリー力の差を感じましたが、今日は互角以上の戦いができています。陳幸同選手にややミスが目立つものの、早田選手は過去イチ強いと思わせるプレー内容です。危なげなく11-6でこのゲームも取ります。もしかしたら今日は、と思いました。
  • 第3ゲーム、形勢が逆転し、接戦になります。決まっていたプレーが決まらなくなります。フォアハンドの強打を3本ミスしては勝てません。7-11でこのゲームを落とします。
  • 第4ゲーム、攻め続けて7-3とリードしたものの、陳幸同選手の逆襲にあって9-11で落としてしまいます。ゲームカウントは2-2に。陳幸同選手が早田選手のやることに対応してきました。流石です。
  • 第ゲーム、対応してきた陳幸同選手に対し、早田選手はその勢いを抑えることができません。第1、第2ゲームのように有利な展開を作れず、7-11でこのゲームも落とします。
  • 第6ゲーム、打ち負ける回数が増え、スタミナ切れなのかプレーに精細を欠きます。余裕のできた陳幸同選手は厳しいコースを突いて吠えます。失った流れを取り戻せずに4-11で負けてしまいました。

第1、第2ゲームで作れた有利な展開を、後続するゲームで作ることができませんでした。陳幸同選手の対応力の高さ、怖さを実感する試合になりました。なお、陳幸同選手は決勝戦で孫穎莎選手を4-2で破って優勝しました。

フル動画。

公開待ち。

ハイライト。

試合後のミックスゾーンでのインタビュー。必見です。

試合結果を伝える記事。

試合後、囲み取材を終えたら練習場に直行。感覚が残っている間に試したいことがあったのでしょう。

まとめ

  • R16で張本美和選手との激戦を制し、準々決勝で陳幸同選手と対戦する権利を得ました。2-0からの逆点負けでしたが、強い陳幸同選手と対戦できたことは、中国人選手がいないコンテンダーシリーズで決勝に進出するよりも大きな価値があるはずです。対戦しないと勝てるようになる方法が分からないこともあるからです。
  • 世界卓球後に左腕での尺骨神経を圧迫した後遺症が今でも続いていることが明かされました。でもこれは時間が経過すれば自然治癒するので心配いりません。
  • 結果ベスト8でしたが、張本美和選手に勝利したこと、陳幸同選手に逆点負けしたことは非常に大きな収穫になりました。
  • 付与されたWRポイントは175でした。日本人4番手である橋本帆乃香選手との差が30縮みました。
  • 次のスウェーデンスマッシュでもリミッターを外したエンジン全開のプレーを期待しています。

卓球のネット配信も有料の時代へ

テレビ東京はWTTの試合の国内における配信権を持っています。これまでもParavi、U-NEXTで有料配信を行ったことがありましたが、今大会からU-NEXTと約3年半の契約で(2028年12月まで)次の大会を有料配信すると発表しました

  • 世界卓球
  • ワールドカップ混合団体戦
  • ワールドカップ個人戦
  • WTTファイナルズ
  • WTTグランドスマッシュ
  • WTTチャンピオンズ

今大会の運営と、しばらく前から続いている傾向から推測すると、上記大会では次の運用になる思います。

  • メインテーブルでの日本人の試合はU-NEXTで有料配信。多くの試合で日本語実況解説あり。
  • メインテーブルでの日本人以外の試合はテレ東卓球チャンネル(YouTube)で配信。
  • メインテーブル(主にT1のみ、世界卓球ではT2が含まれる可能性あり)以外の試合は問答無用で地域制限。

これまで長い年月に渡り、テレビ東京は卓球の試合を無料で配信してきました。が、その時代も終了します。それはWTTが商業化に舵を切った運用の成果が出たということでもありますし、卓球という競技をネットで観戦する視聴者が増えたということでしょう。このような形態で有料化するのは、僕は健全なことだと思います。

ただし、課金しても観れない試合が出てくる現在の強引な地域制限には反対です。誰も得しないからです。

張本美和戦で取ったメディカルタイムアウトについて

事実を整理すると

WTT側から張本美和選手に対してきちんとした説明がないまま時間が流れたことに対し、張本美和選手が不満を口にしていました。早田ひな選手が取ったメディカルタイムアウトについて、WTT側の見解が記事になっています。

なお、早田ひな選手が治療に使った時間は、

  • 通常のタイムアウト1分間。
  • メディカルタイムアウトの5分間。

の合計6分間で、それ以外はWTT側への説明と、判断待ちに費やされました。

伊藤条太さんの解説

この記事が書けるのは伊藤条太さんだけです。

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